2022/03/01 19:18


ポリコットン(ポリエステルとコットンの混紡繊維)は、コットン(綿)100%繊維の柔らかな風合いを残しながら、より軽く、また、化繊に比べては、夏は日差しを効果的に遮り、冬は繊維の呼吸や熱伝導の低さにより幕内結露が抑えられるため、日本の気候に適したキャンプギア素材として、ポリエステルやナイロンと並び支持されてきました。

一方、コットン100%よりもカビづらいコンストラクションで織られたものが多いとはいえ、濡れたまま保管してしまうと簡単にカビてしまいます。

そこで、防カビ加工が施された製品もよく見かけるようになりました。キャンプでは、悪天候のなか撤収しなければならないこともしばしばありますが、帰宅後に都市生活環境のなかで幕を乾燥させるのは、手間だけでなく場所もタイミングもなかなか難しいですから、防カビ加工があると安心に感じます。

ところが、当店のものは撥水加工のみで、防カビ加工は一切行っていません。この記事では当店の防カビ加工に対する考えをお伝えしたいと思います。

防カビ加工には大きく2種類あります。ひとつは生地の原材料(糸の素材)に防カビ剤を添加したもの、もうひとつは織った繊維に防カビ剤を添加したものです。

前者は防カビ能力が長く持ちますが、薬剤の種類を選ぶため高コストになり、テントやタープなどの大型製品で使われているものは把握していません。

後者は薬剤の種類がいろいろありますが、銀イオンや医薬品(うがい薬やノド飴に入れるようなもの)系を使おうとするとやはり高コストなので、その数百分の1で施せる農薬系の薬剤が使われます。

(農薬とひとくくりで言っても、たとえばキャベツの農薬はただの重曹だったりしますが)、衣類でもない布生地に使われるのは主にポストハーベストの仲間で、TBZなど〈欧米では〉発がん性や催奇性が指摘されているような薬剤の亜種です。

なんだか「美味しんぼ」のような雲行きになってきましたが、当店が防カビ加工生地の採用をやめたのは実体験があったからです。

生地選定や試作など、直接生地に触れて作業を繰り返しておりますが、防カビ加工生地にミシンがけを続けているときだけ息苦しさを感じました。変な疲れも溜まるようだったので、加工を疑って、量産分の生地へは防カビ加工を止め、国際環境基準適合の撥水加工のみに切り替えたところ、症状が完全に消えたということがありました。#ちなみにCOVID流行以前です。

そのとき感じたのは、ユーザーのみなさんだけでなく、生地の工場の方たち、ミシンがけをお願いする方たち、みんなこの薬剤からは離れているのが無難だろうということでした。欧米エビデンスは知らんのですけど、キャンパーさんは幕体に触れた手で調理されたりしますし、生産系では濃度が高く接触時間も長いですから、やはり気持ち悪いですね。

加工コストは1平米あたり数円で、大型幕でもわずかなコストで「防カビ加工」を謳えますが、長寿命のポリコットンに対して防カビ効果が持続するのは、せいぜい購入した年くらいです。ならば、基本は乾燥収納していただき、必要なら薬店で売られている安全な防カビ剤を使っていただくのがベストだと考えています(効果が短いため、梅雨時や長期収納前が良いでしょう)。